「できてよかった」その安心、本当に正解ですか?③

このような学習姿勢が生まれる背景には、講師の質との関係もあります。

問題を「なぜそう考えるのか」まで踏み込んで指導するには、教科内容への深い理解と、子どもの思考を言語化して導く力が必要です。

これは経験や研鑽を要するため、誰にでもすぐできるものではありません。

 

一方で、「このタイプの問題はこう解く」「ここは覚えておこう」といった再現型の指導は、一定のマニュアルがあれば比較的再現しやすく、講師の力量差が表に出にくいという特徴があります。

そのため、講師の入れ替わりが多い環境や、指導経験の浅い講師が多い場合ほど、学習はパターン化されやすくなります。

 

結果として、講師は「考えさせる」よりも「当てる」「解かせる」方向に引っ張られやすくなり、塾全体としても分かりやすい成果を優先する姿勢が強まります。

しかしそれは、講師の負担を軽くする一方で、生徒が本来身につけるべき思考力を育てにくくする要因にもなります。

講師の質と学びの質は、切り離せない関係にあるのです。

 

「塾でやったのとそっくりの問題が出た」という体験談が前面に出される背景には、塾側の事情もあります。

 

まず、分かりやすい成果は短期間で示しやすく、保護者にも伝わりやすいという点があります。

点数や正解といった目に見える結果は、広告として非常に扱いやすいのです。

 

また、多くの生徒を同じ仕組みで指導する必要がある場合、学習内容をパターン化し、「出そうな問題」を効率よく練習させる方が運営しやすいという現実もあります。

考え方を深く育てる指導は時間と労力がかかり、指導者の力量にも大きく左右されるため、どうしても後回しになりがちです。

 

さらに、受験結果を短期的に示すことが求められる環境では、「当たった」「できた」という成功体験が重視されやすくなります。

しかし、それは塾の運営上の合理性であって、必ずしも生徒の長期的な成長と一致するとは限りません。

このズレこそが、こうした姿勢が生まれる最大の理由なのです。

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